富山編早くも夜の部です。
この頃めっきり寒くなってきて、秋の香りと気配が一層濃くなってきた。
秋の香りは次第に冬をちらつかせる仕草を見せ、段々と玄い冬がその冷たい裾を広げていく。
風邪引きかけと回復を繰り返してなんだかよくわからない感じになってます(笑。
鋳物工房にて
富山の冷たい空気を吸い込んで
雨晴海岸を経て、元々行こうと話をしていた鋳物工房利三郎さんへと向かう。
雨が上がった後の海岸線は冷たく研ぎ澄まされたような空気で満たされている。
この辺りの写真も残せれば良かったんだけど、工房への時間と運転手という立場上あんまり停まって写真ばっかり撮っているわけにもいかなかったのである。
ごめん。
鋳物工房 利三郎
東京で計画を立てている当時から、富山は鋳物が有名だと知り、これは体験せねば!と思っていた。
小さい頃は体験ものは殆ど興味がなかったのに、今になってこう言うものをやたらやりたいと思うようになった。
多分大人になっていくらか頭も大きくなって、知りたいと思うことが増えたのだろう。
鋳物(いもの)って何?という人のために説明しておくと、鋳型と呼ばれる型に金属を溶かし込んで固めるというものである。
利三郎さんでは富山の産業として有名な錫(すず)を使った鋳物を作ることができる。
やってみよう
おじさんが準備を始める。
写真の撮影許可を伺うと嬉しそうにどんどん撮ってくださいとのこと。
この砂を固めて作った型を彫刻刀でガリガリ削っていきます。
下絵を描いて、型にトレースしたらガリガリガリガリ…
削って形が出来上がったら、写真のようにバーナーで水分を一気に飛ばす。
型の準備ができたら溶かし入れる錫を同じくバーナーでガンガン溶かす。
はんだと同じ感じ(半田も錫)でプルプルと溶け出してくる。
メタルスライムにしか見えない(笑。
ドロドロになったら表面に浮いてる不純物をすくい取る。
型を固定して注入の準備は完了!
ドロドロ〜っと流し込み
錫で作った薬缶でお茶を飲み待機。
錫は浄化作用があるそうで、日本酒でもお茶でも水でもまろやかな口当たりにしてくれる効果があるらしい。
実際、利三郎のお母さんが淹れてくれたこのお茶はとっても美味しい。
外は雨がまだしとしとと降り続いていて、その音とたまに爆ぜる炭の音が心地いい。
戸の外には高岡の美人姉妹も雨宿りしてる。
姉妹なのか?
このまぁるい背中はいつまでも眺めていられる。
そうして2時間ほどでバリ取りなどの処理を前出のおじさんが職人技で仕上げてくれたら受け渡し。
この日はぐい呑を作って、S氏は箸置き?のようなものを作ったのであった。
自宅に戻り、ぐい呑で日本酒を飲んでみると
うーん、確かに美味い
錫製のぐい呑やその他食器類は結構なお値段するが、錫製品にちょっとハマってしまいそう。
富山の飲み屋はきっと全部美味いに違いない
毎回出てくるこの謎理論は一体なんなのか。
旅に出て、その土地の何かが優れているに違いないって思うのは、そう信じたいからなのか、はたまたそう言う何かを実際に感じているのか。
何れにせよ、だいたいどっかいくと美味しいものだったり美しいものだったりに出会える。
そして、それは旅の醍醐味だったりもするわけである。
そんなこんなで、S氏の旅の目的である何でもいいから美味いものを食いたいと言う要望を叶えるため、富山駅周辺をウロウロ。
いろり
とてもとても美味しいお店。
富山は美味しいものがいっぱいあるんだって勝手に思い知ったのに、帰ってきてなんて言う名前のお店だったのかがどうしても思い出せない。
が、S氏と領収書の記録を探して店名を調査!
いろり(食べログ)
お店は繁盛していて、入り口付近の丸テーブルに通してもらった。
そこにはお魚がぶら下がる。。。
いろりと言う名に違わず囲炉裏としてる(笑。
よく知らないけど幻ってついてるからきっと凄いに違いない!!そう思って頼んでみた。
ふわふわの身は淡白な味わいの中にじんわりと広がる甘み。
う・・・美味い。
富山で有名といえば白えび。
念願叶って邂逅を果たした。
そもそもエビがそんなに好きじゃない癖にもー美味い。
世の中には美味しいエビがいるもんだ。
鰤しゃぶの前に取りあえず刺身で。
今まで極寒の海を泳ぎ渡って来たことが伝わる程の弾力。
グルタミン酸が脳髄まで染み渡る。
そして来ました鰤しゃぶ。
氷見の寒ブリは当然富山でも美味い。
だし汁おそらく昆布のみ。
付け合せも葉物ともみじおろし、それからポン酢。
何もしなくても美味い。ぶりを投入した後のだし汁だけで何杯でもご飯行けちゃう。
正直すこぶるお腹いっぱい。
が、しかしこの日のS氏は違った。
彼は云うのだ。
こんなに美味いならもう一軒鰤しゃぶ食べよう
えっ、マジすか
だい
やって参りました二件目。
だい(retty)
もう入口がおしゃれで、こう言う隠れ家ダイニングバー的なのってお高いんじゃないの?
って言う雰囲気。
では、お料理をば。
かつて家のそばのスーパーでのど黒が600円で売ってたので、捌いて塩焼きにしたんだけど、それとはもう別次元。
高級魚って言われるのが理解できる。
炙ってるが故の香ばしい香りとのど黒自身の香りがたまらない。
塩とレモン汁を振りかけて食べるそれは美食そのもの。
香箱ガニはズワイガニの雌。
爽やかな香りと濃厚な内子の味わい。それにポン酢のジュレが最高に美味い。
香箱ガニをひたすら食べる妖怪とかになりたくなる。
そしてやって参りました。
本日二度目の鰤しゃぶ。
今冷静になって考えると一晩に鰤しゃぶを二回もいただくって意味がわからない。
だいさんの鰤しゃぶはだし汁が1店舗目とは打って変わり、株で出汁を取っているそうだ。
優しい甘みが出ている中にグルタミン酸爆弾を投下するわけだからそんなの美味しいに決まってる。
椎名林檎と宇多田ヒカルが共作したら最高にいい曲できるのと同じ理屈。
いや、わかるよ?
締めたい気持ちはわかるけど、おっさんもうお腹パンパンよ。
金色のだし汁は輝いてるんだけど。
店内のカラーを払拭した版。
大変美味しゅうございました。
大量に美味しいものと出汁を摂取した私はしばらく店の外から動けなくなったのでした。